R18作品について、一人の書き手としての明確な姿勢と考えを表明しておく必要があるかと思い、このような文章を綴ります。
(1)契機
「この作品はフィクションであり、実在のものとは一切関係がありません」……このような注意書きは、日本に住んでいれば誰もが必ず一度は目にするものです。私はこれまで、「リアル(現実世界)とフィクション(作品)は別物で、混同してよいものではない」という認識は、至極当然のように持たれているものだと思っていました(少なくとも成人した大人ならば持っていないはずがないと思っていました)。
ところが2026年2月、通称マンガワン問題と呼ばれる不祥事が公になりました。本件に私は非常に強い憤り、怒り、苛立ち、気持ち悪さ、嫌悪感を抱きました。加害者および加害者の関係者に対しても、いまだに憤怒の念を抱いています。これ以上の負の言葉を語りたくないので本件に対する感情の表出はここまでにとどめておきますが、この件を知った私は、「一人の書き手として、何も行動をせず、これまでどおりの態度のまま創作活動をしてよいのだろうか?」と悩みました。
これまでにも残念ながらこの国で、あるいは他国で、いっそフィクションなのではないかと思うほどの事件は起きていました。漫画家による犯罪も、初めてのことではありません。それでもマンガワン問題の内容は、直接の加害者だけでなく加害者と関係のあった企業や教育機関の対応も含めて、筆舌しがたい嫌悪感を私にもたらしました。リアルとフィクションの線引きができておらず、フィクションのノリで子供に残酷な性的加害をする大人がいるなんて、信じたくないほどの衝撃だったのです。
この不祥事を知った直後、「R18作品を創作している自分は、そんな情けなくて気持ちの悪い大人に養分を与えている側なのではないか」という気がしてしまい、二週間ぐらいはずっと心がざわざわしていて、気が気ではありませんでした。自分が書く作品は基本的には女性向けですが、「女がR18作品を書くということは、結局そういうことを望んでいるんだろ」と言われかねない。女性が被害者になることについても、自分は助長してしまっているのではないか――そう思うと、自由に創作を楽しむ心すら翳ってしまっていました。
そんな自分の中のざわつきと向き合い続けている間に、問題発覚から約三カ月が経過しました。
R18作品を書くということは、決してノーリスクではない。それでも私は、小説を書いていきたい。全年齢もR18も、頭の中に浮かぶストーリーを形にしたい。そのリビドーを消すことはできない。
そんな自分の思いを心の中心に据えたうえで、「一人の書き手」としてどうするべきか、考えがまとまりました。それは、「リアルとフィクションの線引きをしている」という姿勢、そして、「R18作品を書いているからといって、リアルにおける性的な問題を軽視しているわけではない」という姿勢を明示していこう、というものです。
自分自身が性的な問題の被害者にも加害者にもならないために。また、自分以外の誰かが性的な問題の被害者や加害者になる理由に、私の存在や作品が使われてしまわないように。そのために、明確な姿勢と考えを表明しておきたいと思います。
(2)矢崎未紗の作品
矢崎未紗が創作するすべての小説作品は、現実世界の日本国と外国の歴史や文化(時代を問わず)をベースとした世界観によって構築されています。作品によっては、明らかに「現代日本が舞台だな」とわかるような作品もあります。ですが、そうした作品であっても、「現実世界の日本国をベースにしている」だけです。すべての作品が矢崎未紗の作り出したフィクションで、現実世界に存在する一切合切のものとは異なります。また、リアルに存在するもの(人、集団、団体、国家、思想、宗教、歴史、文化など)とは一切関係がありません。まずはこの前提をご理解ください。
(3)フィクション(作品)における不正行為
矢崎未紗が創作する小説作品は、すべてフィクションです。そのため、作品内おける表現や登場人物たちの言動、起こる事件や出来事などは、必ずしも現実世界の規則や倫理観に合致しているとは限りません。自由な表現の一種として、あるいはストーリーの必要上、「リアルの規則や倫理観に照らし合わせたら不正行為と言わざるを得ない展開」も生じる可能性があります。
(4)リアルとフィクションの線引き
(2)(3)を踏まえ、矢崎未紗はフィクションとして創作した作品内で不正行為を描くことがあります。だからといって、現実世界の規則や倫理観を蔑ろにする意図は、すべての物語および矢崎未紗には一切ありません。
現実世界の日本国において、児童(十八歳に満たない者)との性交等は、法律によって禁じられています。(参照:児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律) また、児童以外の対象に対しても、同意のない性行為は明確な犯罪です。いかなる理由があろうとも、同意のない性行為は許されるものではありません。同様に、性犯罪に限らず、法で定められたあらゆる違法行為は、絶対にしてはいけません。
現実世界の規則や倫理観に合致しているとは限らない表現やストーリーを描くことがあったとしても、矢崎未紗はリアルとフィクションの線引きを強く認識し、「自分たちが生きる現実(リアル)」と「作られた物語(フィクション)」とは別物であるとの前提に立って物語を書いております。R18作品を書いているからといって、リアルにおける性犯罪および犯罪行為、不正行為を容認することはありません。法に反していない、たとえばセクハラやパワハラ、カスハラなどの、社会的に望ましくない行為についても、決して容認、擁護することはしません。
(5)読み手に求めること
作者として読み手の皆様に求めることは2つです。1つは、矢崎未紗がこのような姿勢と考えで創作活動をしていることをご理解いただきたいということ。そして2つ目として、私と同じように、リアルとフィクションの線引きをしっかりと持っていただくことです。
エロ漫画やエロ小説があるからといって、現実世界においてそれらの作品の内容を真似してよい理由にはなりません。ましてや同意のない性行為、および性加害、その他あらゆる犯罪行為、非社会的な言動をするなど言語道断です。フィクションをフィクションとして楽しむ姿勢を、どうか失わないでください。そして同時に、リアルにおいてはあるべき規範を守り、「いかなる性犯罪も不正行為も許さない社会」を作る一員であると、たまにでいいので意識してみてください。
以上の内容を、今後はR18作品を書くたびにあとがきに必ず入れようか……とも検討しました。しかし、あまりにもしつこく入れると作品を楽しむノイズになってしまいます。非常に悩みましたが、こうしていつでも読み返せるBlogでの表明、また、このBlog記事をプロフィールにリンクするという形で、上記の姿勢を常に示している……ということにしたいと思います。
様々なR18作品が、リアルで誰も傷付かない範囲で、フィクションとして多くの方に楽しまれますように。心からそう祈っております。
初出:2026年5月18日
改稿:----年--月--日
〆
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